漢方掲載記事 『壮快』 目の難病は漢方で治る!

以下は、健康雑誌『壮快』2011年12月号(マキノ出版)に掲載された記事です。

clover 第2回 緑内障
昌平クリニック医師  菅原 万喜

clover 体の水はけをよくし眼圧を下げる漢方薬
  緑内障は、早期に症状が出にくい病気です。未治療のまま進行すると、失明の危険性があり、日本人の中途失明原因の1位2位を争うものとなっています。実に、40代以上の30~40人に1人は、緑内障だともいわれているので、発症率も決して低くはありません。緑内障は、皆さんが特に恐れている目の病気の1つだといえるでしょう。
  目の中には、房水という水が流れており、目の形状は、この房水の圧力によって保たれています。この圧力のことを眼圧と呼びます。なんらかの原因によって房水の流れが妨げられるために眼圧が高まり、視神経が圧迫されて、障害が生じる疾患が緑内障です。これによって、痛んだ視神経の範囲の視野が狭くなってきます。
  よって、緑内障の1つの大きな原因が眼圧にあることは間違いありません。眼圧は10~21ミリが正常値で、人間ドックなどでは、これを超えると緑内障が疑われます。
  しかし、日本人には眼圧が正常な「正常眼圧緑内障」が多いともいわれていますので、眼圧だけで判断できないのも事実です。
  また、緑内障は、進行に応じて、慢性的なものと、急性的なものに2分されますが、漢方薬では慢性的な緑内障が治療対象になります。当院の緑内障の患者さんも皆、慢性のかたです。
  慢性の緑内障は、早期に症状が出にくいので、発見しづらいのですが、目が疲れやすくなったり、かすみ目や頭重感などの症状が現れたりすることもあります。
  緑内障の進行を抑制し、症状を改善するためには、体内の水はけや血行をよくして体を温め、眼圧を下げたり、視神経を丈夫にしたりする必要があります。そのためには、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)五苓散(ごれいさん)の3種類の漢方薬が最も効果的でしょう。
  まず、苓桂朮甘湯は、耳鳴りやめまい、ふらつきなどの症状を伴うかたに処方します。
  女性には、当帰芍薬散を処方することが多いのです。それ以外にも、冷えや浮腫(むくみ)、瘀血(おけつ・血液が流れにくく停滞した状態)のあるかたや、冷え症のかた、おなかのおへその両わきを押して圧痛(押すと感じる痛み)がある場合にも当帰芍薬散がいいでしょう。
  五苓散は、それ以外のかたに有効です。お小水が遠いなど、顕著に水はけが悪いかたには、特に効果的でしょう。
  これらの漢方薬には、利水作用(体内の水の流れをよくする働き)のある沢瀉(たくしゃ・オモダカ科サジオモダカの塊茎)や白朮(びゃくじゅつ・キク科のオケラの根茎)、猪苓(ちょれい・サルノコシカケ科のチョレイマイタケの菌核)、茯苓(ぶくりょう・サルノコシカケ科のマツホドの菌核)、血行促進や保湿作用のある桂枝(けいし・クスノキ科ニッケイの樹皮)や当帰(とうき・セリ科のトウキの根)、利水作用や保温効果を増強する甘草(かんぞう・マメ科のカンゾウの根)などの生薬(漢方薬を構成する草根木皮)によって構成されています。
  より効果を高めるために、以上の漢方薬に加えて、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)などの柴胡剤を処方することもあります。柴胡剤には、肝機能の働きを高め、全身の血行や体調を改善させる働きがあります。また、肝臓と目は、関係が深いと考えられているので、肝機能のバランスを調整することは重要なことなのです。

clover 眼圧は正常値を維持 視野狭窄も改善!
  それでは、漢方薬で実際に緑内障が改善した症例を紹介しましょう。
  40代の女性Aさんは、正常眼圧緑内障にかかり、眼科で点眼薬を処方されました。しかし、点眼薬の副作用が心配だったようで、漢方薬の処方を希望されたのです。
  このかたは、視野が極端には欠けていなかったので、視野狭窄の自覚症状はあまりありませんでした。自覚しているのは、起床後のめまいとふらつきで、こうした症状は首から上の水の流れが悪いときに現れるものです。以上の症状を鑑みて、点眼薬も続けてもらいながら、苓桂朮甘湯を処方しました。
  その結果、眼圧は10ミリ台前半を維持できるようになり、視野狭窄の症状の進行も抑制されました。
  60歳の女性Bさんは、緑内障を患った当初は、点眼薬で眼圧をコントロールしていました。しかし、別の病気でステロイド薬を飲み始めたところ、全身がむくんでしまい、眼圧が再び上昇したのです。
  このかたは、全身がむくんでいたので、水はけが悪い「水毒」といわれる状態であることがひと目でわかりました。水はけが悪いかたには、五苓散が効果的なので、五苓散と柴胡剤を処方しました。漢方薬と点眼薬を続けていくうちに、徐々にむくみが取れて、眼圧も低下していきました。
  これらの実例でもわかるように、漢方薬を飲むようになっても点眼薬はやめないことが重要です。また、眼圧が改善しても、体質の改善や維持を目標に、漢方薬を飲むことをすぐにはやめずに、最低1年以上は続けることをお勧めします。
  そして緑内障の進行をおさえるためには、日常生活の過ごし方も重要です。房水の流れ道を狭くする可能性があるので、長時間下を向いたままの作業は控えるなど、なるべく目が疲れないように心がけましょう。また、入浴はシャワーだけで済ませないで、きちんと湯ぶねにつかって体を温めるといいでしょう。そして、これは、どの目の疾患にもいえることですが、何かのひょうしで眼球を強く押さえたり、冷やしすぎたりしないように注意してください。
  慢性の緑内障は、急激な症状の変化はありませんが、症状の経過をきちんと見ていくことが大切です。定期的な検査と治療を心がけましょう。

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