漢方掲載記事−昌平クリニック院長・鍋谷欣市−

以下は、健康雑誌「壮快」2011年2月号(マキノ出版)に掲載された記事です。

潰瘍性大腸炎の血便がピタリ止まる!82%の患者に効果があった漢方の名薬
昌平クリニック院長・杏林大学名誉教授  鍋谷 欣市

現代医学もお手上げの重症患者に効いた
  どろっとした粘液と血便が混じっている便を、粘血便といいます。粘血便が出る病気には、潰瘍性大腸炎、大腸ガン、細菌性赤痢などが挙げられますが、その中でも最も多いのが潰瘍性大腸炎です。
  潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に傷がつき、びらん(ただれ)や潰瘍ができ、下痢や粘血便が頻繁に見られる病気です。粘血便は出る場合と、出ない場合があります。炎症性腸疾患の一つで、その炎症は、粘膜の広範囲に渡ります。そのため、一日に5〜10回もトイレに行かねばならず、症状はよくなったり悪くなったりのくり返しです。
  日本人に急増している難病で、患者数は10万人にも及ぶとされていますが、その原因はいまだに解明されていません。主に、細菌やウイルス感染説、免疫異常要因、遺伝的要因や、食生活などの環境的な要因が関係していると考えられています。
  西洋医学による治療では、抗炎症剤やステロイド剤を用いることが主流です。いずれも症状をコントロールする薬なので、根本的な解決には結びつきませんし、副作用の問題もあります。
  だからこそ、難病とされているのですが、この潰瘍性大腸炎に優れた効果を発揮する漢方薬があります。
  それは、桃黄湯(とうおうとう)という漢方薬です。この処方は、私が独自に編み出したもので、桃花湯(とうかとう)黄土湯(おうどとう)という処方を組み合わせたものなのです。
  桃花湯
には、
赤石脂(しゃくせきし)粳米(こうべい)乾姜(かんきょう)という生薬(漢方薬の原材料)が配合されています。黄土湯には黄土(おうど)阿膠(あきょう)附子(ぶし)甘草(かんぞう)白朮(びゃくじゅつ)地黄(じおう)黄苓(おうごん)などの生薬が配合されています。
  どちらの漢方薬も、漢方について書かれた有名な古典で、「膿血便(粘血便)」に用いる処方として紹介されているのです。
  そこからヒントを得た私は、桃花湯黄土湯に配合されている生薬の大半を加えた処方、桃黄湯を考案しました。
  そして早速、潰瘍性大腸炎の患者さんに試したところ、期待どおり、高い改善効果が得られたのです。現代医学もお手上げだった重症の潰瘍性大腸炎の粘血便が、桃黄湯を使い始めて、1週間ぐらいでピタリと止まることもありました。
  実際、2001年1月から2004年9月までの間、潰瘍性大腸炎の患者さん225名に漢方治療を行い、そのうち166名に桃黄湯を服用してもらった臨床試験もあります。下痢や粘血便などの主症状が、2週間から2ヵ月までに改善したものを「著効」、6ヵ月までに改善したものを「有効」としました。すると、両方合わせると、約70%に効果が確認できたのです。

トイレの回数がへり血便も完全に消失!
  このように、潰瘍性大腸炎に対して大きな力を発揮する桃黄湯ですが、最近では、これに青黛(せいたい)という生薬を加えた処方が、さらに効果的ということが判明しています。
  青黛は、藍染にも用いられる色素成分のことで、生薬について書かれた古い文献の中で、「解毒・止血作用がある」とされています。桃黄湯の中の黄土湯も、止血作用がある処方ですので、青黛を加えることで、より止血作用を高めた処方になるのです。
  また、青黛だけでも止血作用が高いので、大桃花湯(だいとうかとう)胃風湯(いふうとう)啓脾湯(けいひとう)などの漢方薬に青黛を加えた処方も、非常に有効だということがわかっています。
  実際の臨床試験でも、潰瘍性大腸炎に対する有効性は、前述した桃黄湯を超える結果が現れています。
  これは、平成22年の第61回東洋医学会で発表したもので、10代から60代の男性8名と女性3名、計11名に青黛を加えた処方(桃黄湯、大桃花湯、胃風湯)を服用してもらいました。
  すると、1〜2週間で粘血便や下痢が止まった「著効」は5例、4週間までに改善した「有効」が4例ありました。合わせると、82%もの有効率であることが判明したのです。なお、著効例の中には、わずか1日で止血効果が認められたケースもあります。
  それらをまとめると、まず血便が消失し、それに伴って、泥状だった便が有形便になり、トイレに行く回数がへっていく傾向があるようです。
  実際、青黛を加えた処方には、次のような有効例があります。
  Aさん(55歳・男性)は、潰瘍性大腸炎による血便があり、夜間にトイレに行く回数が10回もありました。しかし、この処方を服用するようになったところ、わずか1週間後には、トイレに行く回数が5回になり、便の血の量もへってきたそうです。そして、3週間後には完全に血便が消失しました。
  Bさん(51歳・男性)も、潰瘍性大腸炎による下痢と血便が認められていましたが、この処方によって1週間で血便が改善していき、泥状だった便も有形便になったのです。Bさんの場合、4週間後には、血便が完全に消えました。
  Cさん(26歳・女性)も、下痢と血便が出ていました。Cさんに対しては、体質に合わせ、啓脾湯という漢方薬に青黛を加えて処方したところ、3ヵ月後には、下痢も血便も消失したのです。そればかりか、貧血も改善し、妊娠したと喜んでいました。
  難病とされている潰瘍性大腸炎ですが、あきらめるのは早計といえます。最近は、さらに症例もふえてきています。ぜひ、漢方薬による治療も選択に加えるようにしてください。


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