漢方掲載記事 『壮快』 目の難病は漢方で治る!

以下は、健康雑誌『壮快』2012年2月号(マキノ出版)に掲載された記事です。

clover 第4回 飛蚊症、老眼
昌平クリニック医師  菅原 万喜

clover 目の緊張をほぐす漢方薬が効果的
  飛蚊症は、目の前に蚊が飛んでいるように見える、目の疾患です。特に、明るい場所や白い壁、テレビの画面を見ているときに多く現れます。
  見えるのは蚊のような形とは限らず、髪の毛やゴミ、なかには薄いベールがかかったように見えることもあるようです。いずれにしても、常に目の中を何かが動き回っているのは、非常にうっとうしいものです。
  飛蚊症が多く現れるのは、40〜50歳前後です。大半が、加齢によって生じる眼球内の硝子体(網膜と水晶体の間を満たしている組織)の変性や濁りが原因です。
  硝子体は無色透明のゲル状です。このゲル状の部分に濁りが生じたり、加齢とともに液状化して目の内部で動いたりすると、硝子体自体や、中の混じりが網膜に影を落とします。その影が、物を見るたびに動いて、目の前に蚊やゴミが浮遊しているように見えるのです。
  また、目の中の出血や網膜剥離(網膜がはがれて視野や視力を失う病気)など、深刻な病気がその原因となることもあります。特に、若いかたで発症した場合には、これらが原因のケースも多く見られます。
  年齢に関係なく、飛蚊症にかかったら、まず眼科で眼底検査を受けることをお勧めします。
  飛蚊症と同じように、加齢によって起こる代表的な目の症状が、いわるゆ「老眼」です。
  年を取ると、レンズの役割を担う水晶体が徐々に硬化して弾力が弱くなり、毛様体の筋肉の力も弱くなります。これらが原因で、目のピント調節機能が低下し、近くが見ずらくなります。一般的に、読書時における目と本との距離は33センチだといわれていますが、この距離でピントが合わなくなった状態が、老眼だといわれています。
  飛蚊症も老眼も、老化によって対象の見え方が変化し、日常生活に支障を来たす疾患です。どちらも血行や気(エネルギー)の巡りをよくして、目の筋肉をほぐす作用のある漢方薬が効果的です。
  飛蚊症と老眼に最もよく使われる漢方薬は、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)です。ピントを合わせる筋肉を強化し、目の疲れを取ります。老化の進行を緩やかにし、飛蚊症と老眼両方の改善効果が期待できます。
  牛車腎気丸
は白内障にも効果のある漢方薬です。その構成は、水はけをよくする車前子(しゃぜんし・オオバコの種子)や、筋肉を増強する牛膝(ごしつ・ヒユ科ヒナタイノコズチの根)などからなります。
  牛車腎気丸の「腎気」とは、腎の働きを強めて、精力を増強する働きのことを指します。牛車腎気丸は、比較的体力がある人に向いています。
  疲労による衰弱や体力消耗の症状が見られるかたには、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)が効果的です。
  補中益気湯
は、不足している気・血(血液)・水(血以外の体内の水分)を補い、それらの巡りをよくする漢方薬です。血行を改善して疲労を解消する人参(にんじん・ウコギ科オタネニンジンの根)、気力を補う黄耆(おうぎ・マメ科キバナオウギの根)、胃腸の働きを整え血行を促進する乾姜(かんきょう・ショウガの根茎)など、10種類の生薬(漢方薬を構成する草根木皮)で構成されています。
  また、気・血・水の巡りの悪化によって、目のピント調整機能が低下し、硝子体が濁り、水晶体がかたくなったかたには、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)を処方します。
  十全大補湯は、気を補う桂枝(けいし・クスノキ科ケイの若枝)、血を養う当帰(とうき・セリ科トウキの根)や地黄(じおう・ゴマノハグサ科ジオウの根茎)、水分代謝をよくする蒼朮(そうじゅつ・キク科ホソバオケラの根)や茯苓(ぶくりょう・サルノコシカケ科マツホドの菌核)などの10種類の生薬で構成されています。十全大補湯は、補気(気を補う作用)や補血(滋養強壮)の妙薬なので、飛蚊症や老眼の改善とともに、気力と体力の回復にも効果的です。

clover 飛蚊症と同時に老眼も改善
  それでは、実際の症例をご紹介しましょう。
  30代後半の男性Iさんは、長い間パソコン作業の多い仕事に従事しており、ここ数年で、飛蚊症を発症してしまいました。
  Iさんはもともと近視が強いかたです。近視が強いと、比較的若くして、硝子体の変化が出やすい傾向にあります。Iさんは、幸いにして網膜剥離などはなく、硝子体の濁りや硝子体が目の中で動くことが主な原因です。さらにパソコンによる目の疲労が加わって飛蚊症を発症したのだと思われます。
  そこで、硝子体の濁りに固定してしまったピントをほぐすために、補中益気湯を処方しました。飲み始めてから約1ヵ月後には、目の調節機能が改善して、濁りにピントが合わなくなり、飛蚊症が解消したのです。
  Iさんは若かったので老眼の症状は出ていませんでしたが、年配のかたは、両方の症状が出ることも少なくありません。そういったかたは、漢方薬によって飛蚊症の症状が改善すると、同時に老眼もよくなることが多いのです。
  また、老化現象は、体の冷えや疲労の蓄積、食べすぎなどが原因で進行しやすくなります。ふだんからこれらの点に留意して、規則正しい生活習慣を送ってください。 


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