鍋谷院長の漢方なんでも相談室

以下は健康雑誌「壮快」1999年11月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。

いつも膀胱の辺りが不快な残尿感を治したい
  私は、39歳になる女性で、身長は157センチ、体重は52キロあります。
  24歳のときに膀胱炎にかかってしまいました。その後、しばらく病院の泌尿器科にかかっていましたが、そのときから残尿感が残るのです。いつも膀胱の辺りがむずむずして、気持
ち悪いといった感じがしています。
  体調のよいときは、排尿後も特に何も感じないこともあります。ですが、ちょっと体が疲れていたり、残業などで睡眠不足になったりするときは、きまって、とても不快な残尿感を感じるのです。
  また、残尿感があるので、どうしてもトイレが近くなってしまうのです。残尿感のあるときは、夜も、2、3回トイレに立ちます。そのため、どうしても熟睡できません。
  手足はあまり冷たいと感じたことはありません。どちらかといえば、寒がりなほうだと思います。肌寒いときは、よく厚着をしています。疲れやすく、肩こりもあります。体力には、あまり自信がありません。
  このつらい残尿感を忘れられるような漢方薬はあるでしょうか。どうか教えてください。 (39歳/女性/匿名希望)


猪苓湯合四物湯がより適している
  不快な残尿感などの症状からして、慢性の膀胱炎になっていることは間違いないと思います。
  あなたが、24歳のときにかかったのは、急性の膀胱炎だったのでしょう。

  この急性の膀胱炎には、細菌性のものと非細菌性のものとがあります。大部分は、細菌性で、原因菌の約80%は大腸菌といわれています。たいていは抗生物質(カビなどから作られる強い効き目の薬)で治るのですが、うまく治り切らず、慢性化することがあります。
  慢性化する膀胱炎には、基礎になる病気、例えば結石や、尿道狭窄などの奇形があるものが多いのですが、それがなくても、慢性化し、あるいは再発する人がいます。
  主な症状は、残尿感、頻尿、排尿痛の3つですが、それほど重症ではなく軽いものが多いようです。ときには、神経性の頻尿という要素が加わっている例もあります。
  いずれにせよ、泌尿器科で精密検査を受けてください。症状が繰り返し出ているのは、なにか基礎的な病気があるためかもしれないからです。
  検尿して菌はないか(薬に耐性を示す菌がふえてないか)、たんぱくは出ていないか(出ていれば腎臓の病気が考えられます)といったことも調べてもらってください。
  もっとも、残尿感が生じ、夜間頻尿が起こるのは、体が疲れたり、睡眠不足になったときで、体調のよいときはほとんどなんの症状も見られないということからして、腎臓などの重い病気が隠れている心配はまずないと考えていいでしょう。
  また、最初の急性膀胱炎からもう15年もたっているので、たくさんの細菌が見つかるということもないと思います。
  おそらく、泌尿器科的、言い換えると現代医学的には、大した異常は認められないという結論になるでしょう。となると、漢方の出番です。
  あなたは、身長157センチで、体重52キロですから、中肉・中背といえます。また、手足は冷たくはないが、寒がりのほうで、疲れやすく、体力にはあまり自信がないということです。体力のある実証ではないのですが、かといって虚証でもない、その中間の虚実間としていいでしょう。そうした人の膀胱炎を治すにはまず、尿を膀胱にためないことが必要なので、利尿作用(尿の出をよくする働き)の強い薬(漢方では利水剤という)を用います。
  第一選択剤は、猪苓湯 (ちょれいとう)です。これは、多少体力のある人に差し上げる薬で、利尿と消炎効果に優れています。猪苓茯苓沢瀉、滑石阿膠という、いずれも利尿作用のある五種類の生薬(漢方薬の原材料)でできているのです。薬の名にもなっている猪苓をはじめ茯苓沢瀉には、とくに優れた利尿作用があります。阿膠には止血作用もあり、滑石には消炎作用や、膀胱の粘膜を滑らかにする作用もあるのです。
  しかし、体力的にこの薬が少し強すぎる人には、これに四物湯(しもつとう)を加えた、猪苓湯合四物湯(ちょれいとうごうしもつとう)を用います。
  四物湯は、当帰川きゅう芍薬地黄と、その名のとおり、4つの生薬からできています。いわゆる、血の道に用いられることが多く、体を温めて、貧血を治し、疲れもよく取る薬です。
  これがあなたには、より適していると考えられます。熟睡できないとも書かれていますが、四物湯は、精神の疲れを癒す働きもありますので、その面でもいい薬です。直接診断していないので、よくはわかりませんが、実際はもっと弱々しい虚証のタイプだというのであれば、清心蓮子飲(せいしんれんしいん)がよいでしょう。清心蓮子飲は、胃腸が弱くて、下半身が冷え、のぼせやすく排尿力が弱く、たらたらと流れ出るといった人によく効きます。
  いずれの薬も、2週間も飲めば手ごたえが感じられ、かなりよくなってくるはずです。
  しかし、あなたの場合、この残尿感を15年も持ち越しています。ですから、くずれた体のバランスを直すために、1ヵ月から3ヵ月ぐらいお飲みになり、徐々にやめていくというようにしたらいかがでしょう。

line

● 漢方治療はその時のその人に合った薬を微調整するオーダーメイド処方です。
  必ず専門の医師にご相談ください。
このページのトップへ
Copyright(C) 昌平クリニック.記事の無断転載を禁じます