鍋谷院長の漢方なんでも相談室

以下は健康雑誌「壮快」1999年3月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。

目のかすみと疲れがひどくなんとか漢方薬で治したい
  私は、現在53歳の女性で、身長は155センチ、体重は48キロです。30代のころから、体が疲れると、まぶたが重く感じたり、目がしょぼしょぼしたりしていました。首から肩にかけて、こりも起こっていたのです。
  40代後半には、新聞などを読むと、ひどく目が疲れるようになり、目もかすむようになってしまったのです。日中は、外に出るだけでまぶしく、サングラスなしでは歩けないほどでした。いつも目の辺りが重だるく、目が痛い感じがしました。
  50代になると、目のかすみ、疲れ、重だるさが、よりひどくなりました。首のこりや肩のこりが、我慢できないほど、しょっちゅう起こるようになってしまったのです。大きな病院の眼科で診てもらいましたが、特に異常はなく、老化によるものだといわれてしまいました。
  食欲もおう盛で、ほかに特に悪いところはありません。冷え症で、おふろ上がりでも手足はすぐに冷えます。寝るときも、手足の冷えが気になりますが、顔はほてりぎみです。排尿や排便の回数は人よりも多いほうだと思います。つらい目の症状を治す漢方薬はないでしょうか。 (53歳/女性/匿名希望)


まずは釣藤散を勧める

大きな病院で検査を受けて、特に異常はないといわれたということですが、これは非常に有益な情報です。自分で疲れ目やかすみ目だと思っていても実は緑内障(目の中の圧力が高くなる病気)など、治療が必要な病気が隠れている場合があります。この人は、そうした

可能性を除外したうえで相談を寄せてこられたので、回答を考えるうえでも非常に参考になりました。
  この人は、現代医学的には眼精疲労といえると思います。眼精疲労とは、普通の人なら疲れない程度に目を使っても、それに耐えられずに目が疲れてしまう症状や、いったん疲れると、なかなか治りにくく、回復してもすぐにまた疲れてしまう症状、そして、目の疲れ以外に鼻の不快感や頭重感、吐きけ、おう吐、かすみ目などに悩まされるといった症候群のことです。
  眼精疲労の原因は、さまざまです。視力の調節がうまくいかない調節性眼精疲労、目を支える筋肉に原因がある筋性眼精疲労、結膜炎や緑内障、更年期障害などの症状として現れる症候性眼精疲労、左右の見え方に大きな違いがある不等像性眼精疲労、コンピュータなどの使いすぎで起こるVDT症候群、精神的要因や環境要因が関連する神経性眼精疲労などがあります。
  この人は、眼科で異常なしといわれているので、目そのものの変化や異常が眼精疲労の原因でないことはわかっています。つまり、自律神経(意志とは無関係に内臓や血管を支配している神経)の失調などが関連した状態です。漢方的にいえば、体の3つの要素である気(一種の生命エネルギー)、血(血液)、水(水分)の不調和、つまり、全身の調和が乱れ、その症状が主に目の眼精疲労として現れていると考えられます。
  そのうえで、やや細かく検討していくと、53歳という年齢で、冷えが強いということですから、更年期の症状が出ている可能性が考えられます。ただ、質問のお便りには更年期の症状のことが書いていないのではっきりとはわかりません。
  下痢や便秘は問題なさそうですが、やや排尿や排便の回数が多いといっているところをみると、神経質な人で、神経性の要因も考えるべきかもしれません。血圧のことは書いてありませんが、肩や首のこりが非常に強いそうですから、肩周辺の血行はよくないと思われます。
  これらのことから、まず第一に選択されるのは、釣藤散(ちょうとうさん)、あるいは加味逍遥散(かみしょうようさん)です。釣藤散は、中高年すぎで慢性的に続く頭痛、高血圧、神経質でのぼせやすく、肩こり、めまい、耳鳴りがあるなど、つまり脳動脈硬化症、高血圧症、神経症、更年期障害によく用いられますが、目の症状の改善にもしばしば効果を現します。
  この人は、足が冷えて顔がほてる、冷えのぼせであり、もし、更年期障害の症状が強い場合には、加味逍遥散です。これは、疲れやすい、イライラする、肩こり、冷えのぼせ、虚弱、月経不順、更年期障害などの女性によく用いる処方です。
  次に考えられるのは、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)です。疲れやすい、食欲がない、目の力がなくなってきた、目がかすむというようなとき、この処方が使われます。
  症状に応じて、この3つの処方のうちから、最適なものを主薬として選んでください。これらの処方のうち、どれが体に合うか、効いているかを実感するためには、最低1ヵ月は服用を続ける必要があります。
  八味丸(はちみがん)か、六味丸(ろくみがん)を併用すると効果的なことがあります。胃腸が丈夫なら八味丸を、胃腸が弱いなら六味丸を選びます。
  肩こりが強いときは、葛根湯(かっこんとう)を併用するとよいことがあります。肩や首のこりが強く、のぼせて頭が痛いというようなときには効果的です。1日3回の服用のうち、2回は主薬を飲んで、1回は葛根湯を服用します。これにより、肩や首のこり、のぼせ、頭痛、頭重はもちろん、目の症状も改善されることがあります。
  薬が効果的なら、3ヵ月から6ヵ月は続けてください。体に合った処方をそのくらい続けると、眼精疲労の症状も軽快するはずです。それ以降は、症状を自覚したときに服用する頓服的な用い方でもかまいません。



● 漢方治療はその時のその人に合った薬を微調整するオーダーメイド処方です。
  必ず専門の医師にご相談ください。
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