鍋谷院長の漢方なんでも相談室

以下は健康雑誌「壮快」1999年5月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。

つらい自律神経失調症をなんとか治したい
  私は、現在不定愁訴に大変悩んでいます。身長は159センチ、体重は52キロです。首から肩にかけてのこり、耳鳴り、頭痛、めまい、三叉神経痛、座骨神経痛、腰痛などがあります。病院を転々としましたが、器質的には異常がないといわれました。
疲れやすく、顔色も悪く、冷え症で、生理痛もあります。神経過敏で、高校生のときから、神経内科にもかかっています。病院を替わるたびに自律神経失調症、うつ病、不安神経症といろいろ診断されます。
  小さいころから鼻が悪く、慢性鼻炎、アレルギー性鼻炎でした。最近では鼻閉感が強く、特に朝と夜にひどくなって、なかなか寝られません。排尿の回数は1日5回ほどで、夜間もトイレに立ちますが、尿の量は少なめです。下痢と便秘をくり返しています。すぐカゼをひき、よく咽頭炎や扁桃炎を起こします。
  血圧は最大血圧が90〜100ミリ、最小血圧が60〜70ミリです。症状が多く、どの漢方薬が合うのかわからず、困っています。どうぞ教えてください。  (31歳/女性/匿名希望)


加味逍遥散か柴胡桂枝湯がよい
  あなたは非常に複雑で多彩な症状を呈しています。私は、自律神経失調症の症状として、次のように整理してみました。
  まず第1に、頭が痛い、めまいがする、耳鳴りがする、神経過敏などの精神神経の症状

です。これらの症状は、自律神経失調症の中でも、精神的、神経的な要素が大きいものです。
  第2に、疲れやすい、顔色が悪い、冷え症、生理痛、低血圧などの症状です。これらは、自律神経失調症の中でも、血管運動神経の失調が関係する症状です。自律神経は意志に関係なく体をコントロールしている神経ですが、その中で全身の血管の運動状態を支配しているのが血管運動神経です。この神経の調子が悪くなってこれらの症状が現れていると考えられます。
  第3に、首や肩のこり、三叉神経痛、腰痛などがあり、これらは筋肉などの運動器が障害されているためと考えられます。
  第4に、自律神経の中の胃腸をコントロールしている神経の障害があり、下痢と便秘をくり返しています。これは過敏性腸症候群の典型的な症状です。
  第5に、あなたは、アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状もあります。
  一方、現代医学的な治療を行うとなると、例えば、精神神経症状に対しては精神安定剤、血管運動神経の不調に対しては血液循環改善剤、運動器の障害に対しては筋弛緩剤や鎮痛剤、胃腸神経の障害に対して、下痢のときには下痢止め、便秘のときには下剤、アレルギー性鼻炎に対しては抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤などを処方することになり、多くの種類の薬を大量に飲まなければなりません。
  こんなときこそ、漢方の出番といえるでしょう。漢方でも、5つに大別した症状が単独で現れた場合には、それぞれに対応した薬を処方します。例えば、精神神経症状なら、漢方の精神安定剤である加味逍遥散(かみしょうようさん)女神散(にょしんさん)柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)、血管運動神経の失調にはお血(血が滞ること)を巡らせて冷えを取る桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)、運動器の障害には八味地黄丸(はちみじおうがん)加味逍遥散、過敏性腸症候群には桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)真武湯(しんぶとう)、アレルギー性鼻炎には小青竜湯(しょうせいりゅうとう)などが用いられます。
  しかし、あなたのように多彩な症状が一度に現れたからといって、これらをすべて処方する必要はありません。漢方では、多くの症状の中から1つのポイントを見つけて、それを中心に治療し、ほかの症状も自然に軽快させることを目指します。
  本来なら、どの症状をポイントにするかを決めるには実際の診察が必要なのですが、お便りに記された情報からそれを考えてみることにします。
  あなたは、体力の弱い虚証タイプであることは間違いないでしょう。精神面の悩みや精神不安、つまり、漢方でいう気(一種の生命エネルギー)の流れの異常が根本にあって、血(血液)と水(水分)の巡りが悪くなり、自律神経のバランスがくずれてさまざまな症状が現れていると考えます。気を考慮しながら、血や水の流れをよくすれば、改善すると思われます。
  第一選択として、加味逍遥散柴胡桂枝乾姜湯を勧めます。細かいことを抜きにすれば、この2つの薬は大変よく似ています。どちらも、疲れやすい、頭痛、めまい、動悸、不眠、生理痛などを目標に使用して、さまざまな症状を改善します。
  第二に、あなたが訴えているめまい、立ちくらみ、尿量が少なめという症状から考えて、真武湯を勧めます。第三に、生理痛、腰痛、冷えなどから、当帰芍薬散も考えられます。
  そこでまず、加味逍遥散柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)を服用してみてください。これらはどちらでも、ほぼ同じ効果が得られるばずです。2週間も続ければ効果が現れ始め、4週間続ければ体に合っていると実感できるでしょう。この2つのうちのいずれかで体調が改善したら、それ以後も続けて飲んでください。
  もし、ある程度、体調は改善したけれども、めまい、立ちくらみ、尿量の異常など、水の症状が今一つよくならないときは、真武湯を併用してみてください。朝と夜に加味逍遥散柴胡桂枝湯、昼に真武湯を飲むか、加味逍遥散あるいは柴胡桂枝湯真武湯を1日おきに飲んでもけっこうです。

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