鍋谷院長の漢方なんでも相談室

以下は健康雑誌「壮快」1999年9月号(マキノ出版/マイヘルス社)に掲載された記事です。


頭痛と頭のひどいふらつきをなんとか漢方で治したい
  私は、50歳になる女性です。1年半前に腰のヘルニア(軟骨などの組織が本来の位置から移動したため痛みが現れる病気)の手術を受けました。腰の痛みは取れたのですが、たびたび頭痛に悩まされるようになりました。
  その後、さらに困ったことに、頭がふらふらするようになったのです。それから現在までは、ほとんど毎日、頭がふらふらしているような状態です。毎日ではありませんが、頭痛も起こります。仕事をしていますが、毎日の通勤はとてもつらいのです。仕事は、接客などの立ち仕事なので、もし倒れでもしたらどうしようと不安に思いながら仕事をしています。
  どちらかといえば、冷え症です。生理はだいたい毎月あります。肩こりがひどく、特に、肩から首すじにかけてのこりがひどいようです。また、足はだるく、目も重く感じます。仕事から帰宅すると、どっと疲れが出ます。頭痛と頭のふらつきだけでも取れれば、ずいぶん楽なのですが、漢方で治せないでしょうか。身長は153センチ、体重は47キロです。よろしくお願いします。 (50歳/女性/匿名希望)


半夏白朮天麻湯がよく効く
  頭痛には、例えば、脳腫瘍(脳やその周囲の組織にできる腫れもの)、カゼ、緑内障(目の中の眼圧が異常に高くなって痛みを伴う病気)など、なんらかの病気が原因で起こる二次性の頭痛と、病気がはっきりとした原因ではなく起こる慢性頭痛(常習性頭痛)とがあ

ります。あなたの場合は、後者の慢性頭痛と考えられます。
  慢性頭痛は、偏頭痛(片頭痛)と緊張性頭痛に分類されています。
  偏頭痛とは、血管性の頭痛のことで、なんらかの血管の運動に伴って起こる頭痛です。突然、発作的に起こる場合がしばしばあり、急に痛くなったり、治ったりすることもあります。血管の動きと関連する頭痛なので、脈の拍動に合わせて痛むことがよくあります。
  頭の片側だけが痛む場合が多いのですが、両側が痛むこともあります。偏頭痛の痛みは、数時間から数日続くことがあり、ときに吐き気が起こります。
  一方の緊張性頭痛は、頭部の筋肉が持続的に緊張することが原因で起こります。この頭痛は精神的な原因が関連して起こる場合もしばしばです。緊張性頭痛は、偏頭痛に比べると痛みが軽く、頭に帽子をかぶったような鈍痛や、締めつけられるような痛みが起こるのが特徴です。筋肉の緊張が関係しているので、後頭部から首の後ろ、両肩にかけて痛みが広がることもあります。
  このように、頭痛は、主に偏頭痛と緊張性頭痛とに分類されるのですが、きれいに二分されているわけではなくて、両方が混合して起こる混合型が意外と多いのではないかと考えられているのです。
  西洋医学では、こうした分類法に基づいて、筋肉の緊張をほぐす薬、血流を改善する薬、精神安定剤などを投与します。
  しかし、漢方では、気(一種の生命エネルギー)、血(血液)、水(水分)の不調和によって頭痛が起こると考えるのです。その不調和を改善するために、特に、血と水の巡りをよくして、自然と頭痛を改善することを目指します。
  あなたの頭痛について考えてみましょう。1年前にヘルニアの手術を受けて、腰の痛みが取れて、その後、頭痛に悩まされるようになったそうですが、この頭痛と腰が関係あるかどうかはわかりません。
  接客業をしているということなので、精神的なストレスもあるのではないかと推測します。全身的にはかなり冷え症のようなので、血の巡りが低下しているのではないでしょうか。
  頭痛は、きりきりとした激しい痛みではなく、どちらかといえば軽い痛みで、それにふらつきが伴っているように思われます。全体として、緊張性の頭痛ではないかと推定できます。
  第一選択としては、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)を勧めます。この薬は、胃腸があまり丈夫でなく、強い冷え症で、頭のふらつきがあり、水分の巡りが悪い(水滞の)人の頭痛によく効きます。
  走ったり、みずおちのところをたたいたりすると、胃部でポチャポチャと、水の音がする人がいます。これは漢方で胃内停水(振水音または拍水音ともいう)と呼ばれ、胃に水がたまっていることに伴う水滞の一つの症状です。半夏白朮天麻湯は、こうした胃内停水のある人にはよく効きます。どちらかといえば、緊張性の頭痛によく効く薬です。
  第二選択としては、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)です。最初の半夏白朮天麻湯と、この呉茱萸湯とは鑑別がとても難しく、どちらを選ぶか困ることがたびたびあります。
  呉茱萸湯は、冷えや肩こりがあり、いくらか吐き気がして、振水音や胃内停水の伴う頭痛によく効きます。ただし、こちらの頭痛は激しい頭痛で、偏頭痛に近いといえます。
  第三の選択としては、 桂枝人参湯(けいしにんじんとう)です。あなたは冷え症、疲れやすい、目が重い、足がだるいなどの症状を訴えています。こうした強い疲れに伴う慢性頭痛には、桂枝人参湯が奏功することがしばしばあります。
  いずれの薬も、1、2週間、服用すれば、効いていると実感できるはずです。長く続ける必要はありませんが、続けたほうが調子がよいという人もいますので、続けてもかまいません。



漢方治療はその時のその人に合った薬を微調整するオーダーメイド処方です。
  必ず専門の医師にご相談ください。

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